2年前に改装した14席のシックな店内。メニューはシェフのおまかせコースのみで、旬の食材を使った最高のフレンチと心地よいホスピタリティが味わえる。
-二つ星獲得を聞いた時の率直な感想をお聞かせください。
え、なんで?という感じでしたよ。もちろん評価していただいたことは嬉しいですが、星の怖さも知っているつもりですから。1989年にフランスヘ行って最初に勤めたのは、その前年に三つ星を獲得したばかりのレストランだったんですよ。ミシュランが始まったのは1900年。その時点ですでに89年の歴史がありますから、フランスでは、二つ星を取ったからといって日本ほどの大騒ぎはありません。それでも120席の店で、連日150人くらい、最高で170人もの来店があった。これは、ものすごい数なんです。その店で、スタッフのプライドもさることながら、いちばん驚いたのはスタッフの食事の内容です。お客に出すような高級な素材を、まかないで使う。本物の三つ星というのは、そういうことなんです。
-ミシュランを獲得した後、まわりは何か変わりましたか。
何も変わらないです。ただ、モチベーションを維持していくということは難しいことだと思う。30年ほど前に出た『フランス料理名作選』という本があります。当時の星付けの店を載せているのですが、今その約三分の二は星を持っていません。中には、なくなっている店もある。それが現実です。よほどのことがない限り、いずれ落ちていくんです。
-谷さんのプロとしての原動力はなんですか?
これしかなかったですから(笑)。今までやってきたことを放棄するのはもったいない。フランス料理は、ここのところ移り変わりがとても激しいんです。そんな中で『谷の料理』を皿の上に表現しなければならない。そのために、いつも自分の生き方を考えます。例えば、僕のふだんの生活はとてもシンプルですから、お皿の上の料理もとてもシンプルです。目に見える料理は結果であって、料理に行き着く過程は自分の内なるもの。僕にとって、自分を表現する方法が料理だと思ってます。その結果としてのミシュランであって、決して目的ではないんですね。
京都の農家から取り寄せる旬の素材を使い、季節感と健康を追求したこだわりの日本料理を、25階の眺望とともに楽しめる。
お客様に必ず挨拶し、厨房へ入る。そんなスタイルを守り続ける高田さん。
ミシュラン一つ星獲得後の心境を本校・平澤校長とお話しいただいた。